2005年5月5日

「ショック」

 左目に穴が空いてしまった。とはいっても、目玉そのものではなく、網膜の一部に欠損が出来たという事で痛くも痒くもない。 しかし、見え方がいつもと違っていたので、こいつは一寸まずいぞ、と直感した。
 細かい黒い点が無数に目の中にあり、暗いところではそう気にもならないが、明るいところでは全ての点に光が反射して、ふわっと霞んだ状 態になる。なんとなく左斜め上に黒く丸いものが見える。いつもなら、すぐにでも病院に行くところだが、大学の講義新年度初日にあたっていたので、そんな 訳にも行かず、気にはしつつも、その日は眼科には行けなかった。
 翌日市民病院に出かけ、診察の結果が前記の通り、正確には「網膜裂孔」というらしい。こいつが一歩ひどくなると、「網膜剥離」というや つで視野がどかっと欠けてしまう。
 この網膜剥離には嫌な思い出がある。以前、母がこの眼病にかかり手術をした。兄と私は近所の祖母の家で長い間、母の退院を待っていた。 実際は半年か一年くらいだったようだが、何年もかかったように感じた。今から四十年以上前の小学生の頃の話だ。当時は難病で、失明しなかったから幸運 だったそうだ。
 そして一歩手前とはいえ同じような症状になった私は、レーザ光線で穴の空いた網膜の部分を焼き付けると云う、四十年前ならSFのような 方法で10分もかからずに治療は終わってしまった。
 担当医の話では、原因は老化現象だそうだ。10年ほど前「中心性網膜炎」で眼科にかかった時は、働き盛りによくなる病気と言われたが、 今回は何度も何度も「老化」と言われてしまった。病気になった事よりも少しショックだった。
 しかし、眼病や老化以上にショックだったのは、10分もかからなかったレーザー光線の処置費用が、国民健康保険3割負担ですら6万円近 くかかった事だ。貧乏人はおいそれと病気にもなれない。

写真はハナミズキ。さいごのキがついてないと花の名前にならない。